ご当地駄菓子めぐり|地方で愛されたあじ
北海道から沖縄まで、土地ごとに根づいた郷土駄菓子と地場メーカーの味を旅するように紹介。素朴な甘さと地域の文化が香る、ご当地のあじをめぐる読みもの。
駄菓子というと、全国どこの店先にも同じ顔ぶれが並んでいるように思いがちです。けれど少し旅に出てみると、その土地でしか出会えない甘さや、地場のメーカーが守りつづけてきた味が、ちゃんと根を張って暮らしの中にあることに気づきます。駅前の和菓子屋、海辺の直売所、縁日の露店——。同じ「おやつ」でも、土地が変わればこんなにも表情が違う。この記事では、北から南へとゆっくり下りながら、地方で愛されたあじをめぐります。お茶を一杯いれて、のんびりお付き合いください。
北海道・東北|雪国の素朴な甘さ
旅のはじまりは北の大地から。北海道には、お米やいもといった大地の恵みを生かしたおやつが多く残っています。栗山町の谷田製菓がつくるとうきび餅は、その名のとおりとうもろこしの風味をいかしたもち菓子。同じ谷田製菓の大甞飴や、いもの味わいをとじこめた由栗いも 畑のキャラメルからは、北の土地で続いてきた菓子づくりの手ざわりが伝わってきます。
祝いの席や行事に欠かせない郷土菓子も忘れられません。木の年輪のような層が美しいべこ餅や、もっちりとした生地が独特のくじら餅は、北海道から東北にかけて親しまれてきたお菓子です。
東北に入ると、各地の直売所や菓子店が育ててきた味が顔をのぞかせます。岩手・宮城・青森あたりで親しまれる蒸し菓子がんづきは、黒糖のやさしい甘さがしみる素朴な一品。秋田の杉山壽山堂などがつくる秋田諸越は、小豆の粉を固めた上品な落雁。山形・酒田の酒田米菓が一九六二年から手がけるオランダせんべいは、薄焼きの軽い食感で、東北の食卓に長く寄り添ってきました。くるみの香ばしさをまとったくるみゆべしも、この地方らしいしみじみとした味わいです。
関東・中部|街道と城下町のおやつ
南へ下って関東へ。埼玉・熊谷の複数の製造元が守る五家宝は、きなこをまとったねじり菓子で、香ばしさと素朴な甘みが身上です。同じ埼玉北部には、赤飯をまんじゅうで包んだようないがまんじゅうという珍しい郷土菓子もあります。茨城・水戸では、亀印製菓やあさ川製菓などが手がける吉原殿中が知られ、もち米のあられにきなこをまぶした上品な味で長く愛されてきました。
中部地方は、城下町や門前の文化が菓子を育てた土地です。名古屋周辺が発祥とされるたませんは、せんべいに卵やソースを重ねた縁日の人気者。蒸したさつまいもの素朴な甘さがうれしい鬼まんじゅうも、この地方で親しまれてきました。岐阜には、見た目はからすみでも実は米粉のお菓子というからすみ(菓子)があり、ひな祭りの頃に作られることで知られます。
信州・長野では、飯島商店のみすゞ飴が、果実の風味をいかした寒天菓子として長い歴史を重ねてきました。富山の月世界本舗がつくる月世界は、卵と砂糖を主とした口どけのよい干菓子で、北陸の銘菓として親しまれています。
近畿・中国四国|商いの町と瀬戸内の風
商いの町・大阪には、庶民のおやつ文化が色濃く残ります。あみだ池大黒などが手がける岩おこしと粟おこしは、おこし種を固めた歯ごたえのある菓子で、大阪を代表する伝統の味。鉄板で焼くいか焼き(大阪)は縁日や露店の定番で、もっちりとした生地が後を引きます。たこ焼きをはさんだたこせんも、大阪周辺の屋台で親しまれてきた一品です。堺の小島屋などがつくるけし餅は、けしの実の香ばしさが上品な和菓子です。
京都には、ふしぎな名をもつ幽霊子育飴があります。東山のみなとや幽霊子育飴本舗が伝える飴で、その名にまつわる言い伝えとともに、長く語り継がれてきました。滋賀・近江八幡の和た与などがつくる丁稚羊羹は、竹皮に包まれた素朴な羊羹で、土地の暮らしに寄り添ってきた味です。
中国地方に渡れば、広島・亀屋の川通り餅が、くるみともちのやわらかな取り合わせで知られます。山口では、御堀堂や豆子郎などが手がける山口外郎が、わらび粉を用いたもちっとした口あたりで親しまれています。
瀬戸内の四国へ。香川・西讃の山下おいり本舗などがつくるおいりは、色とりどりで軽やかな口どけのあられで、祝いの席に彩りを添えてきました。愛媛・松山の労研饅頭たけうちが守る労研饅頭は、独特の発酵生地が懐かしい蒸しパン風の菓子です。高知では、澁谷食品(芋屋金次郎)や南国製菓(水車亭)などが手がける芋けんぴが、さつまいもの甘みとカリッとした食感で人々に親しまれています。
九州・沖縄|南国の甘さと島の味
九州に入ると、黒糖や芋を生かした濃い甘みが旅人を迎えます。福岡のクロボー製菓などがつくる黒棒は、黒糖をまとった焼き菓子で、素朴ながら後を引く甘さ。北九州のスピナが守るくろがね堅パンは、その名のとおり固い歯ごたえで知られる、土地に根づいた一品です。福岡・東雲堂が一九〇六年から手がける二○加煎餅は、にわか面をかたどったユーモラスなせんべいです。
熊本のいきなり団子は、さつまいもとあんを生地で包んで蒸した素朴なおやつ。鹿児島では、南海堂などがつくる黒糖菓子げたんはや、セイカ食品のさつまいもキャラメルに、南国らしい甘さが息づいています。長崎・五島のかんころ餅は、さつまいもをいかしたもち菓子で、島の暮らしとともに受け継がれてきました。
旅の終わりは沖縄へ。揚げ菓子のサーターアンダギーは、外はカリッ、中はふんわりの素朴な甘さで、いまも島のおやつの代表格。沖縄各地の製菓店がつくるくんぺんは、ごまの風味豊かな焼き菓子です。丸玉製菓などが手がけるタンナファクルーは、黒糖を生かした素朴なクッキー風の菓子。丸吉塩せんべいやサンシオなどの沖縄塩せんべいは、ほんのり塩のきいた軽い口あたりで、島の食卓に欠かせません。佐藤製菓の黒糖ねじりやあん玉(佐藤製菓)、玉木製菓のかめせんといった島の菓子も、それぞれの作り手が味を守りつづけています。
あじは土地とともに
こうしてめぐってみると、駄菓子や郷土菓子は、ただの甘いものではないことがよくわかります。手に入る材料、祝いの行事、暮らしのリズム——その土地ならではの事情が、そのまま味のかたちになっている。広く全国に知られたお菓子も、地元の小さな製造元が静かに守る一品も、どれもその土地の時間を背負っています。次に旅に出るときは、ぜひ地元のお菓子を一つ、お土産にしてみてください。袋を開けるたびに、訪れた土地の風がふっとよみがえるはずです。